定石通用せず!マーケティング戦略 PLG型SaaSの実例

マーケティング担当者のためのコラム

マーケティング戦略の既存の定石に疑問を持ち、新たなアプローチを試みる企業が増えています。

SaaS(Software as a Service)の製品「board」が、従来のマーケティング法則を覆す成功事例として注目されています。

本記事では、そのマーケティング戦略の大転換や特徴、失敗から得た気づきについて詳しく解説していきます。

具体的には、無料登録ボタンの外し方や効果測定の定石からの脱却、有料転換率やサポートコストの改善について紹介します。

また、SaaS製品「board」の特性と制約、料金体系や営業手法の方針、個別相談会の問題などにも触れます。

さらに、「ただ試してみるだけ」のユーザーの有料転換が進まない疑問や解決策についても考察します。

この記事を読めば、マーケティング戦略の新たなアプローチやSaaS製品の特性・制約、ユーザーの有料転換の課題と解決策が分かります。

マーケティング戦略で大転換!成功事例を解説

今回は、マーケティング戦略の成功事例を解説します。具体的な例を挙げながら、どのような戦略変更が行われ、その結果どのような成果が得られたのかをご紹介します。この事例では、既存のマーケティング法則に挑戦し、まずは無料登録ボタンを外すという戦略変更が行われました。通常、マーケティングではリード獲得を重視し、積極的にコンバージョンに導くことが求められますが、この事例では逆にリード獲得を意図的に減らすことで成果を上げました。また、効果測定の定石を逸脱しながらも、有料転換率の向上やサポートコストの削減といった結果も生み出されました。

既存のマーケティング戦略に挑戦:無料登録ボタンを外す

私たちのマーケティング戦略は、従来の常識に挑戦することから始まりました。私たちは、無料登録ボタンをファーストビューから外す決断をしました。

従来のマーケティング法則では、リード(見込み顧客)を多く集めることが重要視されています。しかし、私たちは「質より量」を優先する鉄則に逆らって、無料登録ボタンを外すことで新たなアプローチを試みました。

この戦略変更による結果、有料転換率が13%も向上し、有料サポートコストも大幅に削減することができました。

一般的なマーケティング法則:効果測定の定石

マーケティング施策を行う際には、その効果を測定することが重要です。効果測定は、施策の成果を客観的に把握し、改善策を導き出すために行われます。一般的には、売上や利益、顧客数などの数値的な成果を計測する方法が使用されます。また、消費者の満足度やブランドイメージなどの定性的な指標も重要です。このような効果測定の定石を用いることで、マーケティング施策の効果を正確に把握し、戦略の改善に役立てることができます。

戦略変更による結果:有料転換率とサポートコスト改善

PLG型SaaS製品「board」は、従来のマーケティング戦略に挑戦し、成功を収めました。従来のマーケティング法則では、無料登録ボタンをファーストビューに配置することが定石でしたが、「board」はこの定石を覆し、無料登録ボタンを外すという戦略変更を行いました。

この戦略変更により、有料転換率が13%もアップし、さらにはサポートコストも大幅に削減することに成功しました。通常、無料登録ボタンを外すことによって、有料のサブスクリプションに転換するユーザー数は減少する傾向にありますが、「board」では逆の結果を得ることができました。この結果は、従来のマーケティング手法だけに頼らず、独自の戦略を採用することで生まれたものです。

さらに、有料転換率の向上だけでなく、サポートコストの削減にも効果がありました。無料トライアル期間に参加するユーザーが減少したことで、サポートへの負荷も軽減されました。この結果、効率的なサポート提供が可能となり、結果的にコスト削減につながりました。

SaaS製品「board」の特性と制約

SaaS製品「board」は、特定のカテゴリに明確に分類されず、導入や乗り換えが困難な特性を持っています。また、平均的な月額費用は2,000〜3,000円程度であり、強引な営業手法や過度なメールマーケティングを避ける方針を採用しています。
さらに、個別相談会のスケジュールが取りにくいという問題も抱えています。製品の魅力を体験するためのキーとして、無料試用期間が1ヶ月設定されています。

ターゲットがはっきりとせずカテゴリ分けが難しい

PLG型SaaS製品「board」は、特定の業界や用途に絞ったターゲットを持っていません。そのため、カテゴリ分けが難しく、広範なユーザー層に製品をアピールする必要があります。

その中でも、特に中小企業や個人事業主をメインターゲットにしていますが、業種や事業内容によってニーズが異なるため、ターゲットを絞り切ることは難しいです。

例えば、サービス業の場合には人材管理やスケジュール調整のニーズが強いでしょうし、製造業では生産管理や在庫管理が重要となります。

そのため、定型的なカテゴリ分けではなく、ユーザーの業種や事業内容に合わせて柔軟に対応する必要があります。

導入に手間がかかり、乗り換えハードルが高い

ユーザーにとって、SaaS製品「board」の導入は手間がかかり、乗り換えハードルが高いという課題があります。製品の特性上、カテゴリ分けが難しく、導入には時間がかかります。また、乗り換える際のハードルも高く、既存のシステムから移行するためには多くの手間が必要です。さらに、boardの料金体系は平均的な月額費用の範囲であり、ユーザーにとって負担が大きいと感じる場合もあります。しかし、boardは強硬な営業手法や過度なメールマーケティングを避ける姿勢を持っており、ユーザーの利便性を重視しています。このような特性と制約を考慮しながら、ユーザーの導入の手間と乗り換えのハードルを最小限に抑えるための施策が検討されています。

料金体系:平均的な月額費用の範囲

boardの料金体系は、平均的な月額費用の範囲内に収まっています。一般的なSaaS製品と比較しても、2,000円から3,000円程度の料金設定となっており、比較的低価格帯に位置しています。この価格帯は、多くのユーザーにとって手頃であり、導入しやすいと言えます。

強硬な営業手法を避ける方針

マーケティング戦略において、営業手法は非常に重要ですが、強引なアプローチは避けるべきです。特に、PLG型SaaSのような製品では、ユーザーが自ら求めて利用することが重要です。そのため、効果的なマーケティング施策を通じて、製品の魅力や利点を的確に伝える必要があります。

メールマーケティングの過度な利用を避ける姿勢

PLG型SaaS「board」は、金融業界向けに開発された製品です。

通常、マーケティングの一環としてメールマーケティングが行われますが、boardは過度なメールマーケティングを回避しています。

その理由は、ユーザーの体験を向上させるためです。過剰なメールの送信はユーザーに迷惑をかけるだけでなく、メールが意図しないスパムとして認識される可能性もあります。

そのため、boardではメールマーケティングを最小限に抑え、必要最低限の情報提供に絞っています。また、ユーザーが個別相談会に参加するためにはスケジュールが合わない場合もあります。

これはサービスの特性や制約によるものであり、boardが取り組むべき課題の一つです。

個別相談会のスケジュールが取りにくい問題

boardは、SaaS製品の特性として、導入に手間がかかり、乗り換えハードルが高いという課題を抱えています。

そのため、製品についての個別相談会を実施しており、ユーザーが直接質問したり、疑問点を解消したりする機会を提供しています。

しかし、個別相談会のスケジュールが取りにくいという問題があります。

これは、boardを利用するユーザーが増えたことによる需要の高まりに対して、限られた時間と人材で対応するために生じているものです。

ユーザーは、自身のスケジュールに合わせて個別相談会を予約したいと考えているため、スケジュールの都合が合わずに利用できないというケースが増えています。

この問題を解決するために、boardの運営側は積極的に対応強化を図っています。

具体的には、多くのユーザーが利用しやすい時間帯に個別相談会を増やしたり、スケジュールの予約をより柔軟に行えるようにしたりしています。

また、相談会予約が取りづらいユーザーに対して、他のサポート手段(メールやチャットなど)を充実させて、迅速な対応を行うことにも取り組んでいます。

これらの対策により、個別相談会のスケジュールの取りにくさを解消し、ユーザーが必要なサポートを受けられる環境を整えています。

製品体験のキー:1ヶ月の無料試用期間

マーケティング戦略において、製品体験は非常に重要な要素です。特に、SaaS製品の場合、ユーザーが実際に製品の価値を実感するまでには時間がかかることが多いです。そこで、SaaS製品「board」では、1ヶ月という長めの無料試用期間を設けています。

この1ヶ月の期間を通じて、ユーザーはゆっくりと製品を試すことができます。その間に、製品の使い方や機能の価値を十分に理解し、自社の業務に適用することができます。また、長めの期間を設けることで、ユーザーが時間をかけて製品に慣れることができ、より効果的に活用できるようになります。

さらに、この無料試用期間は、ユーザーが製品が自社の業務にマッチするかどうかを確認するための機会でもあります。ユーザーが製品の特定の機能や使い勝手に問題を感じる場合、それが解決できるかどうかを確認することができます。

このように、1ヶ月という長めの無料試用期間を設けることで、ユーザーが製品をより深く理解し、自社に適用するための時間を持つことができます。また、製品の使い勝手やマッチング度合いを確認することができ、より満足度の高い製品体験を提供することができます。

2年間で試行錯誤したマーケティング施策の失敗

ユーザー視点での製品体験を通じて、我々はいくつかの失敗に直面しました。製品を価値あるものと感じるまでの時間が長かったことが一つの要因でした。また、期待値が形成されない場合、無料試用期間を超えることができない可能性がありました。さらに、無料試用は製品が事業にマッチするかを確認するための役割を果たすものであり、有料転換を目指すユーザーを誘導するものではありませんでした。

ユーザー視点での製品体験から得た気づき

2年間の試行錯誤を経て、ユーザーの視点から得られた大きな気づきがありました。まず、製品を価値あるものと感じるまでに時間がかかるということ。私たちのプロダクトは導入に手間がかかり、使い込むことで初めてその価値が発揮されるため、ユーザーが満足感を得るまでには時間がかかるのです。また、期待値が形成されないと無料試用を乗り越えられない可能性もあります。つまり、ユーザーが製品に対して十分な期待を持てず、無料試用期間を終えた後も有料に切り替えることに躊躇してしまうのです。これらの気づきを踏まえ、今後はユーザーが安易に無料試用に登録しないような仕組みづくりを行っていきたいと考えています。

はっきりとしない「ただ試してみるだけ」ユーザーの有料転換の疑問

ユーザーは、単に試してみるだけの目的で無料お試しを利用しても、有料プランに切り替える意思を持つのでしょうか。結論から言うと、価値を感じるまで時間がかかる製品の場合、無料お試しだけでは有料転換を促すことは難しいです。製品の価値を実感するまでは、無料お試しの期間内であっても、ユーザーは有料プランに切り替えることはないかもしれません。また、ユーザーが製品に対して一定以上の期待を持っていなければ、無料お試しを乗り越えることもできません。そして、無料お試しの役割は、自社の業務に製品がフィットするかどうかの検証です。ビジネス上の重要な要素が欠如している場合、ユーザーは有料プランに切り替えることはありません。したがって、ユーザーを安易に無料お試しに誘導するのではなく、適切な期待値を形成するための施策を行う必要があります。

製品を価値あるものと感じるまでの時間が長い

ユーザーが製品を価値あるものと感じるまでには時間がかかることがあります。特に、我々の製品は導入や乗り換えに手間がかかるため、ユーザーは慎重になります。製品に期待する価値を感じるまでには、十分な時間が必要です。それが提供されない場合、ユーザーは無料試用期間を乗り越えられず、有料に転換することはありません。そのため、私たちはユーザーの期待値を形成するために、無料試用期間中に十分な価値を提供するよう努めています。

期待値が形成されないと無料試用を乗り越えられない可能性

ユーザーが製品を無料試用する際には、一定以上の期待値が形成されていることが重要です。しかし、boardの特性や制約により、ユーザーが製品の価値を感じるまでに時間がかかることや、適切な期待値を形成できない場合には、無料試用への乗り越えが困難となる可能性があります。このような課題を解決するために、ファーストビューから無料試用ボタンを除外し、代わりに製品の紹介動画を導入することで、ユーザーの適切な期待値形成を図ります。これにより、ユーザーが無料試用に登録する際には、製品の価値をより明確に感じることができ、有料転換の可能性が高まります。

無料試用の役割:製品が事業にマッチするかの確認

boardの無料試用は、ユーザーに製品が事業にマッチするかどうかを確認するための重要な役割を果たしています。無料試用期間を通じて、ユーザーは製品の機能や特性を実際に試すことができます。その結果、製品がユーザーの業務に適しているかどうかを判断することができます。ユーザーが無料試用期間中に製品の価値を実感し、自社の業務にフィットするかどうかを検証することができれば、有料への転換が成功しやすくなります。つまり、無料試用の役割は、ユーザーにとって製品が事業にマッチするかどうかを確認するための重要なステップとなっているのです。

ユーザーを安易に無料試用へ誘導しない解決策

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初期画面から無料試用ボタンを除外する

マーケティング戦略において、「無料試用」ボタンをファーストビューから除外する施策が効果を上げることがあります。例えば、SaaS製品「board」では、ターゲットが明確ではなくカテゴリ分けが難しいことや導入に手間がかかり乗り換えハードルが高いことなどが課題でした。そこで、ユーザーが安直に無料試用へと進むのではなく、製品の価値を実感し、期待値を形成するために「無料試用」ボタンを初期画面から除外する戦略を取り入れました。

期待値形成のための製品紹介動画を導入

「無料お試し」への登録を促すために、「製品紹介動画」を導入することにした。なぜなら、ユーザーが「無料お試し」に興味を持つには、まず製品の価値を感じる必要があるからだ。しかし、製品の特徴やメリットをテキストだけで伝えるのは難しいことがわかった。そのため、わかりやすく製品の魅力を伝えるために、動画を活用することにした。製品紹介動画では、直感的に理解できるようなデモンストレーションや実際の顧客の声などを取り入れ、製品の良さを伝えることを目指している。

戦略転換後の成果

戦略転換の結果、無料お試しボタンをファーストビューから削除することで、有料転換率が13%向上しました。さらに、有料継続率も向上し、サポートコストも大幅に削減されました。以前はリード獲得のために「質より量」を重視していましたが、新しい戦略によって、より効果的な結果を得ることができました。これにより、ユーザーの期待値形成に重点を置くことができ、製品の価値を感じるまでの時間が短縮されました。戦略転換後も、改善の余地はあります。今後は、無料お試し登録直後に適切な事前期待を形成する仕組みを整えることが課題となります。

今後:無料試用直後のユーザーの期待値を如何に形成するか

ユーザーが無料試用に登録した後、適切な期待値を形成することは非常に重要です。なぜなら、ユーザーが価値を感じないまま無料試用期間が終了すると、有料継続への意欲は低くなる可能性があるからです。

この問題を解決するために、私たちは2つのアプローチを取ることができます。まずは、無料試用直後にユーザーに適切な期待を持ってもらうための事前情報を提供することです。具体的には、製品の特長や利点をわかりやすく説明した動画を作成することが有効です。これにより、ユーザーは製品の価値を事前に理解し、無料試用期間中に期待を持つことができます。

また、無料試用期間中にユーザーが疑問や問題を解決するためのサポートを提供することも重要です。これにより、ユーザーは製品の使い方や機能についての理解を深めることができます。さらに、定期的なコミュニケーションや教育資料の提供により、ユーザーが無料試用期間中に価値を感じ、有料継続への意欲を高めることができます。

以上のアプローチを組み合わせることで、無料試用直後のユーザーの期待値を適切に形成し、有料継続への意欲を高めることができます。これにより、より多くのユーザーが有料継続へのステップアップをすることが期待できます。

この記事のまとめ

この記事では、マーケティング戦略の大転換によって実現した成功事例を解説しました。従来のマーケティング法則に挑戦し、無料登録ボタンを外すという戦略変更が有料転換率の改善とサポートコストの削減に繋がりました。さらに、SaaS製品「board」の特性と制約についても触れました。ターゲットの明確化の難しさや導入の手間、乗り換えハードルの高さなどの課題がありましたが、平均的な月額費用の範囲や営業手法やメールマーケティングの利用を避ける姿勢により、ユーザーのニーズに合った戦略を展開しました。2年間の試行錯誤の結果、ユーザー視点での製品体験から得た気づきを得られました。さらに、ただ試してみるだけのユーザーの有料転換の疑問にも取り組み、製品価値の形成や無料試用期間の導入など、解決策を提示しました。今後は、無料試用直後のユーザーの期待値形成にも取り組む必要があると述べました。

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